『 Friend 』
脚本版
タイトル
『Friend』フレンド 〜はじまりのはじまり〜
キャスト
・鈴木亜希子(スズキ先生)
・畑 俊彦
・森下 空
・福本アナウンサー
・ウグイス嬢
畑、18歳。 2年浪人中(大学入学は18歳)
亜希子、大卒。+2年トラック24歳。⇒大学院4年、28歳。先生になる。畑大学3年の時。
高校
畑、大学入学の夏、18歳。亜希子24歳。トラック運転手〜受験。
畑、大学2年生の夏、19歳。亜希子25歳。大学院1年。
畑、大学2年生の夏、20歳。亜希子26歳。大学院2年。
畑、大学2年生の夏、21歳。亜希子27歳。大学院3年。
畑、大学3年生の夏、22歳。亜希子28歳。大学院4年生。
畑、大学4年生の夏に23歳卒業。初&ラストフライト。大学院5年生+顧問。
空、2年生。本編 亜希子28歳。教諭。
空、3年生。
空、4年生。畑26歳。亜希子30歳。この年。ラストシーン。
* 夜。海の波が静かに聴こえる
畑 「なぁ、そら?寒うないか?」
空 「え、あ。うん。大丈夫です」
畑 「北海道って、ほら、見てみ? 星、きれいじゃろ?」
空 「違うものなんですか?」
畑 「あー、そうじゃのぉ。このへんは特別きれいじゃと思う」
空 「私は、ずっと地元こっちだからわかんないです。
ハタケ先輩?」
畑 「どした?」
空 「どうして、北海道のこんな田舎の大学受けたんですか?」
畑 「広島じゃったら、まぁ大阪とか、東京に比べたらきれいに見えるほうかもしれんけど、星がちょっとしか見えんくて。
じゃけぇ、うらやましかったんよ。
親がなんやかんや言うの無視して、無理やりこっちの大学受けた。
ここしか受からんのんじゃけぇしかたなかろーがぁゆうて、嘘ついてのぉ」
空 「……」
畑 「じゃけど、こっちで3年半ちかく過ごしてみて、来てよかったぁ思うよ。
今日みたいな、こんなきれーな星空目の前にしたら、うん」
空 「星、好きなんですね?」
畑 「まぁな。ずっと見とっても飽きんけぇなぁ〜。
あー、じゃけど、星っちゅうか、……空かな?」
空 「え?」
畑 「わし、空が好きなんよ」
空 「え、あ、え」(一瞬告白されたと思って混乱する)
畑 「わし、……空が好きじゃ。空が……」
空 「……」
畑 「空が青かったり、夕焼けのオレンジ色になったり、夜の暗闇に星がキラキラしとったり。
そういうの。日本だけじゃなくて、ヨーロッパとか、アフリカとか、ブラジルとかキューバとか行って見たりしたけど、
日本の空が一番きれいじゃと思った。
なんちゅーか、北海道のここの空が一番おちつくっちゅうんかの?
大学生6年分やって。じゃけど、……じゃけぇ、気付けたんかもしれん。
じゃけぇ、……あれ?空?聴いとる?」
空 「え?あ、はい。すみません、空ってそっちだったんですね」
亜 「おまたせー、」
畑 「なんや〜、聴いとらんかったんか〜や、めずらしくええ話しよったのに」
亜 「なに?ええ話って?」
畑 「北海道の空がいちばんええのぉ、っちゅう話」
亜 「空ちゃん、はい」
空 「あ、ラムネ、瓶で置いてあったの? ありがと」
亜 「いい感じに冷えてるでしょ?」
畑 「聴けぇや」
亜 「はい、おっさん。甘いのすきでしょ〜」
畑 「おっさんってなんじゃい」
亜 「はい、じゃー、初出場!そして、初フライト?っていうか?初とびこみおめでとー!」
空 「おめでとー」
畑 「ありがとー。わし、オリンピック出られるじゃろ〜エエ飛び込みよぉ〜」
亜 「はいはい、洞爺湖飛び込み選手権、出場おめでとー」
亜&空&畑 『かんぱーい』
*ラムネの瓶がガラスの音を立てる。中に入ったラムネの液体が揺れる。
*歓声が響く。洞爺湖。
亜「はじめてのフライト。第2回人力飛行機選手権。」
*盛り上がる歓声
*失速していく飛行機はもはや見慣れたモノ。
*数少ない出場者と、それを見守る家族たちは、飛び込み大会を楽しんでいる。
*歓声があがって、ものすごい水しぶきが上がる。
アナウンサー福本 「いったーー、とびこんだーーー!
洞爺湖でまたしても空中分解!飛び立った瞬間、見事に大破!
今年最高の壊れっぷり!
人力飛行機空中分解コンテスト部門!優勝間違いないでしょう!
来年は用意しておきましょう!空中分解大破部門!
さぁ!記録は”どーなん”でしょう?
出ますか?(スタッフにマイク越しによびかける)
出ましたか?
それでいい?だいたいで。うんOK?
はい、道南大学飛行機サークルの結果が――でました!」
ウグイス嬢コール 「道南大学飛行機サークルの記録、……30(さんじゅう)、センチメートルです」
アナウンサー福本 「道南大学やりました!
なんと、道南大学!学生記録に名を残しました!
唯一の学生チームが、なんと!アタリマエですが学生記録、学生新記録を樹立しました!
こいつぁはケタ違いのフライトです!
300ミリメートル!大会新記録達成です!」
*盛り上がる歓声!歓声がゆるやかにおちついていく
亜(N)「右も左もわからないまま、アイツは突っ走って、だから、結果はさんざんだった。
だけど、なにかに打ち込むことの気持ちよさと、達成感と、
それから……
そこで生まれる大切な人と人の繋がりを、アイツは教えてくれた。
バカみたいな思いつきで、
バカみたいな笑い声で、
だけど、バカにしかできない行動力で、
まわりに集まった人を笑顔にさせる。
私が大学の先生をやってられるのも、アイツのひとことがはじまりだった」
亜希子 タイトルコール 『Friend』フレンド 〜はじまりのはじまり〜 第2話
*トラックの走る音
*クラクションをププッと鳴らして、ブレーキを踏む
*なれた感じで畑が乗り込む
畑「おはよ」
亜「はい、キャラメル。買っといたわよ」
畑「いつもすまないねぇ」
亜「どこまで行くの?」
畑「ん〜っと、終点」
亜「バカか」
畑「今日、休みだから、学校」
亜「あっそ」
*しばらく無言で走る
畑「……あのさぁ、」
亜「なに?」
畑「あきこはこだわりとかある?」
亜「ん〜、別に」
畑「たとえば……なんだろ?なんかない?」
*ガサゴソ
亜「ちょ、ちょっと、さわんないでよ。
ちょっと、ちょっと、(SEクラクション)はたけ!そこのわるがき!こらっ!」SEぷっぷぷー
畑「あ、なんこれ?」
亜「こらっ!さわんなっつーのー」SEぷっぷぷー
畑「教員免許?」
亜「だからーー」SEぷっぷぷー
畑「あ、あきこ?あれだよ? 公道でむやみにそれ鳴らしてるとつかまるよ?」
亜「はいはい。もう、まったく。」
畑「運転免許もでてきた。
うお、真顔。おねえさん、まゆげないねー」
亜「あー、うっさい、見んな、見んなって。もーーー」
畑「……」
亜「なによ?」
畑「教員免許とったんだ。」
亜「そうよ。それで?」
畑「先生になりたい思うたん?」
亜「べつに。単位取るついで」
畑「ふ〜ん」
亜「……」
畑「……」
亜「……」
畑「こだわり?」
亜「それが?」
畑「うん。まだ、こだわれる?」
亜「どういう意味?」
畑「こうやって、大切にしてる」
亜「べつに」
畑「ふ〜ん」
亜「……」
畑「……」
トラックが真直ぐな道を走っていく。
畑「あきこさ?」
亜「なに?」
畑「先生んなったら?」
亜「はぁ?」
畑「なればいいのに」
亜「バカじゃないの」
畑「高校がだめなら、大学とか」
亜「キャラメルばっかり食べてるから、脳みそまでキャラメルんなっちゃったんじゃないの?」
畑「いや、まだ24でしょ?」
亜「それが?」
畑「いや、30までには先生になれるんじゃん?」
亜「冗談言うのもそのくらいにしときな」
畑「うん」
亜「……」
畑「こだわれるんなら、こだわればいいのに」(つぶやくように)
亜「……バカじゃないの」(つぶやくように)
亜(N)「アイツに言われたからじゃないけど、
アタシはその日の夕方、道南大学の大学院に行って、入学のために必要な手引きをもらってしまった。
大学院に行くっていうのがどれだけハードルが高いのか。
その努力を、今のアタシができるのか。
それを確かめたかった」
畑「自己推薦に、社会人入試ね」
亜「うん」
畑「やってやれないことはないんじゃない?まだ5月だし。ゲームだと思えば」
亜「ゲームってあんたね」
畑「大学は学生の数が減ってひーこらひーこら言ってんだ。大学院なんかもっとでしょ?」
亜「そりゃそうだけど?」
畑「あ、あのさー、俺、ちょっと外国行って来るわ」
亜「はぁ?」
畑「一緒についてくる?」
亜「バカ言わないでよ。なんで?」
畑「いや、今朝ね、目が覚めたときに、海。もっといろんな海見てこようと思って」
亜「海?」
畑「んで、カーテンあけたらさ、空が気持ちよかったから、あー、ついでに空も見てこようと思って」
亜「勝手に行けば」(ちょっと淋しい気持ちを強がって)
畑「うん。勝手に行く」
亜「アパートはどうすんのよ」
畑「それで、頼みごとなんだけどさ」
亜「なによ?」
畑「あきこ?俺の家賃払うか、荷物預かるか。どっちがいい?」
亜「あんたバカだわ」
畑「どっちがいい?」
亜「大家さんに払っておけばいいの?」
畑「一年分渡しとくから、さしあたりね」
亜「ヤダ」
畑「じゃあ、決まり。ダンボール3箱だけだから」
亜「冷蔵庫とかないの?」
畑「いらんと思って、買わんかった。この場所に居座るつもりもあんま無いし」
亜「洗濯機も?」
畑「コインランドリー」
亜「あっそ。で、いつ行くの?」
畑「あさって。もう決めたけぇ」
亜「パスポートは?」
畑「持っとるよ?」
亜「あっそ」
畑「……」
亜「どこ行くの?」
畑「とりあえず、アメリカ方面?」
亜(N)「アイツはそう言って、ニヤリと笑った。
その二日後。」
空で飛行機の音がする。
畑「空港まで送ってくれてありがと」
亜「帰ってくるんでしょ?」
畑「帰ってきて欲しい?」
亜「バカじゃないの」
畑「じゃあ、帰ってくるよ」
亜「いつ?」
畑「受験受かったら。」
亜「誰が?」
畑「あきこ」
亜「帰ってこないってこと?」
畑「なんで?」
亜「だって、受験なんかしないよ?」
畑「ふははは、わかりやすいウソつくんじゃけぇ。
あきこが大学院受かるから、俺、帰ってくる。んじゃ」
亜「何言ってんのよ」
畑「こだわってみりゃいいじゃん。まだ、持ってんなら」
亜「……」
畑「……」
亜「しらない」
畑「じゃ、いってきます」
亜「あ、ハタケー?」
畑「なに?」
亜「あのアパート、家賃安いよね?」
畑「うん、安いけど?」
亜「アタシ、あっち住む。どうせいないんだし、転がり込んでもいいでしょ?」
畑「あきこの今のアパートは?」
亜「今月いっぱいで来月更新。更新にお金かかるし、だから、出ようと思って」
畑「じゃあ、いいじゃん。敷金礼金安くしとくよ」
亜「なんであんたに払うのよ」
畑「一応、俺のだから」
亜「あっそ、じゃあ、管理費ちょーだい」
畑「OK。じゃ、トントンで」
亜「帰ってきたら、家賃セッパンでどう?」
畑「あ、それいいね。のった」
亜「だから……」
畑「帰ってくるよ」
亜「部屋、勝手に使っとく」
畑「うん。よろしく、じゃーまたね」
亜(N)「空港の駐車場で見送った。
いくつもの飛行機が空に羽ばたいていった。
時間になって、アイツが乗った飛行機も、空に飛行機雲を描いて飛び立った」
(トラックのシーンから引用)
>畑「いや、まだ24でしょ?」
>畑「いや、30までには先生になれるんじゃん?」
(直前のシーンから引用)
>畑「こだわってみりゃいいじゃん。まだ、持ってんなら」
亜「バカばっかいいやがって」
亜(N)「真っ青な空に残された一筋の飛行機雲。
なんとなく、アイツに置いてけぼりを食わされた気がして、
なんとなく、悔しくなって。
運転席と助手席の間に、ふたつ並んだ缶コーヒーの空き缶。
それと、空っぽになったキャラメルの箱。
ちょっとだけ、淋しくなってる自分の心がそこに落ちていた。
だから、
だからっていうか、可愛くなんかないアタシの、この性格に似合わないから。
だから、
亜「ふざけんなよ。ぜってー受かってやる」
>畑「あきこが大学院受かるから、俺、帰ってくる。」
亜(N)「そんなんだから、だから、負けたくなかった。
飛行機雲を見上げていたアタシは、そのときのアタシは、
負けたくないって気持ち。
それだけ、だと、思いたかったんだと思う」
空に飛行機が飛び立っていく音。
*つづく*